秋の研究会 2015 レポート

秋の研究会 2015 レポート

日本バイオリン製作研究会
2013年10月31日 於:TKP東京駅前カンファレンスセンター

弦の選択 〜 E線の音色

春の展示会に於けるショーカードの集計結果から当該楽器に使用されている弦の組み合わせについて検証してみた。現時点では既に交換されている事も有り、今回持ち寄った楽器について行った。奏者としてアンサンブル団体で活動されているアマチュア奏者、風間美保子さんに協力して頂いた。 持ち寄った楽器5台にどんな弦が張られているか作者に発言をもらった。

  (*各楽器の弦については下段参照)
  楽器の仕上がり具合に併せて音質の調整を試みた。—パワー
  個性的な音色を求めた。—パワー、派手さ,柔らかさ等
  標準的な弦として選んだ—ドミナント

弦⇩/楽器⇨ABCDE
Gドミナントドミナントオリーブドミナントビジョン
Dドミナントドミナントオリーブドミナントビジョン
Aドミナントドミナントエヴァドミナントビジョン
Eヒルドミナントゴールドブラカット0.27ゴールドブラカット0.26ウエストミンスター

次に特にE線についての考察を行った  E線の効果については銘柄による音色の違いがはっきり出易いのは事実で有るが,多様性故に選定を誤ると他の3弦間のバランス面で問題を生ずる事も有ると想定し、実奏で確認をしてみた(共通曲とE線のみの試奏)。  他の弦とのバランスが良いとする人の数を採った。  次にE線のみの音が良いとする人の数を採った。   結果は以下の通りであった。   (5台の楽器については以下の通り)

E線についての考察ABCDE
バランス1035611
Eのみ18811
総合104131422

ちなみにABCDは2013〜2015の新作、Eは使い込まれて いるもののラベルからドイツの量産品クラスと思われる。   楽器Eの総合点が良かった事の意味する所は   ⭐︎パワーや派手さがかえってバランスを崩す事もあるのか   ⭐︎楽器の個性(キャラクター)を弦で矯正しようとしていないか   ⭐︎比較の基準に少なくとも3本は標準弦の指定をすべきか

本来弦の選定は製作者、奏者の自由であるべきですが、今回の実験で弦の組み合わせについては慎重且つ吟味した選定を奨めたい。
今回では金メッキ線の実奏が出来なかったのが残念であった。

発表    横板薄削り効率的方法
和田常行氏
スプレーのりを使用した板材の固定と切削方向の自由度について及び指板の外し易いネック側加工の実例を写真数枚で解説した。

質疑応答1  Q E線の駒への食い込み対策は有りますか? 平田教次氏
A1 瞬間接着剤で埋める。
A2 刃物を使わず角の丸いもの(例10円玉)で凹ます。
A3 V字象眼や革やシートの張り方
A4 保護パイプはついていても良いが半分くらいの長さで

質疑応答2  Q  ニスの縮みとSpiderCracksの発生で苦戦。原因は?上田政博氏
A1 色ニスと上塗りの間で起っていると思う。メーカー同じでも同質とは限らない。a)上塗りせずとも色ニスで十分仕上がる。
A2 夏季に見えなくなれば問題はないが  a)上塗りは塗りっぱなしでよい。
上記以外にも参加各氏の経験と知恵が披露され、製作に対する熱意が良く伝わった。 

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