【製作者紹介】山口大地さん

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バイオリン製作のきっかけ

一作目のヴァイオリンを製作したのは2009年の夏でした。
コントラバス奏者である叔父の紹介で親のいとこでもある菅沼利夫氏の元で一から製作について教えて頂きました。バイオリンの構造も一切わからない状態からのスタートでしたが完成した一作目のバイオリンを見てもっと満足のできる物を作りたいという欲求に駆られた。その後も工房に通い続けました。

バイオリン製作家として本格的に活動したいと思ったのは2011年でのイタリア留学がきっかけでした。当時在籍していた神奈川大学の交換留学の第一号として一年間ベネチア大学に交換留学をした私は、現地のイタリアの人たちの優しく大らかな人柄、愛情あふれる文化に強く惹かれました。

彼らの文化についてもっとよく知りたいと思うにつれ、イタリアで永く愛されてきた重要な文化であるの一つでもあるバイオリンへの関心もより深まっていきました。

特にクレモナはバイオリンの始まりの土地でもあるのでバイオリンを製作する上で何としても訪れたいという強い憧れを抱きました。

物を作るのが好きという理由から始まったバイオリン製作ですがイタリアからの帰国後に師匠である菅沼氏の紹介でVSJに入会したことで大きな変化がありました。

池袋の展示会に初めて楽器を出展した際、試奏コンサートで実際に自分の楽器がステージ演奏されるのを見て全く別の楽器の様に感じたのは今までにない衝撃でした。

たくさんの来場者の方々とも目と目を合わせながら真剣に接することができました。

そしてベテランの製作家の方から自分の様な新参者まで老若男女問わずバイオリンに関する自由な意見交換ができたことは自分の人生においてもとても有意義な体験でした。

VSJ会員の方たちや展示会の来場者の方たち、そして演奏家の方たちのバイオリンに対する熱意に接するうちに「自分には何ができるのだろうか」「こういう製作家になりたい」というイメージをはじめて明確に持つことができました。

私の父型の祖父は50年間大工として日本のものづくりに長年関わってきました。母方の祖父は上海の日本人街出身で戦後に最初の中国語辞典である『中日大辞典』を愛知大学で編纂した後、サラリーマンとして各国を渡り歩き海外と日本の橋渡しをしてきました。多くの方たちと接する中で自分の生き方について考えた際、日本のものづくりの文化を海外に伝えられる手段としてバイオリン製作はとても魅力的な職業に感じました。

これからの課題

クレモナに留学するにあたって、最も勉強する必要があると感じたのが、バイオリンに対する姿勢だと思っています。私はこれまであくまで自分のためだけにバイオリンを製作することしか考えていませんでした。

しかしVSJに入ってからの4年間で試奏コンサートや来場者の方々の意見を通してバイオリンは演奏者が直接手に取って演奏することにより本来の力を引き出すことができる物なのだと痛感致しました。

様々な製作上のミスや精度の問題、音に関するトラブルなどの課題に直面する根本的なきっかけは演奏家の方たちや演奏を聴く方々の目線に立って製作することが欠けていたことが原因でした。

クレモナの製作学校でたくさんの方たちと接し、本場の空気に触れることで少しでも大きく成長することが出来るよう、海外で活動されている日本人作家の後に続けるよう頑張りたいと思います。

最後に

バイオリンを製作し始めた当初は自分が製作家を目指すことになるとは考えもしませんでした。ですがイタリアの留学をきっかけとして国際的に活動する製作家の方々に対する憧れを強く抱くようになり、VSJの会員になってからは皆さんのバイオリンに対する熱意や愛情に接することでさらにバイオリンの持つ魅力の奥深さについて知ることができました。

これからは受動的ではなく積極的に活動できるよう、皆様への恩返しができるよう微力ながら精進致します。






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